WHITE PAPER | データ品質の見極め方

データクレンジング入門

データクレンジングとは? 表記ゆれ・重複・名寄せを、サンプルデータでわかりやすく解説
── キャンペーンや顧客管理で失敗しないための7つのチェックポイント

公開日:2026年9月28日 / 合同会社オンエーケー

名前や住所の書き方の揺れ、重複登録、「同じ人」の見分け方。データクレンジングと名寄せは、キャンペーンの重複応募対策から、DM・会員管理、顧客分析まで、あらゆるデータ活用の土台です。本ページでは、データに詳しくない方にもわかるよう、架空のサンプルデータを使って基礎を説明し、エクセルでできることの範囲や外注を検討する目安、委託先を選ぶときに確認したい観点までまとめました。

01 INTRODUCTIONデータは、入力のたびに揺れる

名前、住所、電話番号。こうしたデータは、入力する人やタイミングによって書き方が変わります。「山田太郎」と「山田 太朗」、「1-2-3」と「一丁目2番3号」。人間が見れば同じでも、コンピューターは「一文字でも違えば別のもの」と判断します。

この「揺れ」を放っておくと、「同じ人」を見分けられず、さまざまな場面で問題が起きます。

たとえば、こんなことが起こり得ます

・キャンペーン・プレミアム商品券(プレミアム付商品券):同じ人が書き方を変えて何度も応募し、「1人○口まで」の制限をすり抜けてしまう
・DM・会員管理:同じ人に同じ案内が2通、3通と届き、費用がかさむうえに印象も悪くなる
・顧客分析:1人の優良顧客が「3人の別人」に分かれて記録され、本当の上客が見えなくなる
・逆のケース:同姓同名の別人を「同じ人」とまとめてしまい、正しい応募者や顧客に不利益が出る

こうした問題を防ぐのが、データを整えるデータクレンジングと、同じ人を見つけてまとめる名寄せです。どちらも目立たない工程ですが、その精度には会社ごとに大きな差があります。

よくある表記ゆれの例

種類同じものなのに、書き方が違う例
氏名山田 太郎/山田太郎(スペースの有無)、髙橋/高橋(異体字)、太郎/太朗(入力ミス)
会社名株式会社オンエーケー/(株)オンエーケー/㈱オンエーケー/オンエーケー
住所1-2-3/1丁目2番3号/一丁目2-3、マンション名の有無や略し方
半角・全角ヤマダ/ヤマダ、ABC/ABC、123/123
ハイフン・長音「-」「‐」「-」「ー」など、見た目の似た記号の混在
電話番号090-1234-5678/09012345678/(090)1234-5678

「表記ゆれ」は「表記揺れ」とも書きます(意味は同じです)。1件ずつなら人の目で気づけますが、数万件になると見つけるだけで大仕事になります。

この資料で使う言葉

名寄せ(なよせ)バラバラに登録された「同じ人」のデータを見つけて、1人分にまとめること。
データクレンジング表記の揺れや入力ミスを直し、データを比べられる形に整えること。名寄せの下ごしらえ。
スコアリング顧客の買い方に点数をつけ、誰にどんな特典を出すかを決めること。

02 TERMSデータクリーニング・正規化・名寄せとの違い

データクレンジングの周りには、似た言葉がいくつもあります。使う人や分野によって意味の幅が少しずつ違いますが、この資料では次のように整理します。

言葉意味この資料での位置づけ
データクレンジングデータの誤り・揺れ・重複・欠けを直し、使える状態に整えること全体をまとめた呼び方
データクリーニングほぼ同じ意味。分析の前処理として、欠けている値(欠損値)や極端な値(外れ値)の処理を指して使われることも多い同じ意味として扱う
正規化(標準化)書き方を一定のルールにそろえること(全角→半角、「丁目」→ハイフンなど)クレンジングの中の一工程
名寄せ同じ人・同じ会社のデータを見つけて、1つにまとめることクレンジングで整えたあとに行う工程

※データベース設計でいう「正規化」は、表の分け方を整える別の意味の言葉です。

作業の順番でいうと、正規化で書き方をそろえる → 重複の候補を見つける → 名寄せで1つにまとめる、という流れになります。書き方がそろっていないまま名寄せをしても、同じ人を見つけられません。

ひとことで言うと… クレンジングは「掃除」、正規化は「そろえる」、名寄せは「まとめる」。

03 BASICS 1名寄せとは何か

申込フォームに入力される名前や住所は、人によって、また同じ人でも入力のたびに書き方が変わります。コンピューターは「一文字でも違えば別のもの」と判断するため、そのままでは同じ人を見分けられません。

下の表は、あるキャンペーン(プレミアム商品券の申込)のデータの一部です(架空のデータです)。

No氏名住所電話番号
A山田 太郎練馬区○○1-2-3090-1234-5678
B山田 太朗練馬区○○一丁目2番3号09012345678
Cヤマダ タロウ練馬区○○1‐2‐3090-1234-5678

黄色の部分が「書き方の違い」。人間が見ればおそらく同じ人ですが、コンピューターにとっては3人の別人です。

名寄せは、次の3つの段階で「同じ人」を見つけていきます。

STEP 1完全一致一文字違わず同じものだけを「同じ人」とする。確実だが、上の例ではA・B・Cは別人扱いになる。
STEP 2あいまい照合「太郎/太朗」「1-2-3/一丁目2番3号」「ハイフンの有無」などの違いを吸収して比べる。A・B・Cが「同じ人の候補」になる。
STEP 3判定ルールの設計「名前と電話番号が一致すれば同じ人」など、どの項目の組み合わせで判定するかを、事業の目的に合わせて決める。
ひとことで言うと… 名寄せは「表記ゆれを直して、同じ人を1人にまとめる作業」。Excelの「重複の削除」ボタンでは、上の3行は1行も消えません。

04 PITFALL名寄せの落とし穴 ──「見落とし」と「まとめすぎ」

名寄せの判定をゆるくすれば重複はたくさん見つかりますが、今度は「別人を同じ人とみなしてしまう」危険が高まります。反対に厳しくすれば安全ですが、重複を見落とします。これが名寄せの一番難しいところです。

No氏名住所生年月日
D佐藤 花子練馬区○○1-2-3 ○○マンション2011985/4/1
E佐藤 花子練馬区○○1-2-3 ○○マンション3051962/11/20

名前も建物も同じですが、部屋番号と生年月日が違います。これは同じ建物に住む同姓同名の別人です(架空のデータです)。

もし「名前と番地が同じなら同じ人」という判定ルールだと、DとEは1人にまとめられ、どちらかの応募が無効になってしまいます。正しく応募した人を落選させることになり、苦情や信頼の低下につながります。

判定の方針起こりやすいこと事業への影響
厳しくする名前の書き方を変えた重複応募(A・B・C)を見落とす口数制限のすり抜け・予算の流出
ゆるくする同姓同名の別人(D・E)をまとめてしまう正しい応募者の不利益・苦情

正解は一つではなく、事業ごとに「どちらの失敗をどこまで許すか」を決める必要があります。大切なのは、その判断基準を発注側と委託先で共有し、あとから確認できる形で残しておくことです。

ご担当者のチェックポイント 委託先に「重複はどうやって見つけていますか?」「同姓同名の別人をまとめてしまわない工夫はありますか?」と聞いてみてください。すぐに具体例で答えられるかどうかが、ひとつの目安になります。

05 EXCELエクセルでできること・できないこと

数千件程度で、項目が少なく、1回きりの作業なら、エクセル(Excel)でも十分に整えられることがあります。一方で、エクセルだけでは難しい作業もあります。

エクセルでできることエクセルだけでは難しいこと
・TRIM関数で余分なスペースを消す
・ASC関数/JIS関数で半角・全角をそろえる
・SUBSTITUTE関数で記号を置き換える
・「重複の削除」で、完全に同じ行を消す
・パワークエリ(Power Query)で置換の手順を記録し、繰り返し使う
・「太郎/太朗」のような入力ミスを、同じ人の候補として拾う(あいまい照合)
・「1-2-3」と「一丁目2番3号」のような住所の書き方をそろえる
・同姓同名の別人を見分ける
・約105万行を超えるデータや、複数ファイルをまたいだ突き合わせ
・各工程で何件を直し、何件をまとめたかを記録して説明する

「重複の削除」は一文字でも違えば別の行として残します。前の章のA・B・Cは、1行も消えません。

ご担当者のチェックポイント 件数が多い、同じ作業がキャンペーンのたびに発生する、結果を説明する責任がある──このどれかに当てはまるなら、エクセルでの手作業から一歩進んだ仕組みを検討する時期です。

06 BASICS 2重み付け(スコアリング)とは何か

ポイント施策や会員施策では、お客さまの買い方に応じて点数をつけ(スコアリング)、誰にどんな特典を出すかを決めます。代表的な方法がRFM分析です。

R(Recency)最後に買ったのはいつか ── 最近の人ほど高得点
F(Frequency)どれくらいの頻度で買っているか ── 回数が多いほど高得点
M(Monetary)いくら使っているか ── 金額が大きいほど高得点

架空の会員5人で見てみましょう(各項目を1〜3点で採点)。

会員最終購入購入回数(年)購入金額(年)RFM合計判定
会員13日前24回12万円3339優良顧客
会員210日前12回4万円3227育成候補
会員35か月前20回10万円1337離れかけ
会員42日前2回3千円3115新規
会員51年前1回1千円1113休眠

会員2と会員3は合計点が同じ7点ですが、中身はまったく違います。会員3は以前は優良顧客でしたが、5か月買っていません。点数の合計だけでは見えないことがあります。

ひとことで言うと… スコアリングは「お客さまの通知表」。ただし、何を目的に付けるかで、見るべき教科が変わります。

07 DESIGNスコアリング設計で押さえたい5つの観点

(1) そもそもRFMが使える商材か確かめる

RFM分析は、住宅・自動車・投資商品のように、めったに買わない高額な商品には向きません(「購入回数」がほぼ全員1回になるためです)。プレミアム商品券やキャンペーンの多くは日常の買い物に結びつくので基本的には使えますが、最初に一度立ち止まって確かめることが大切です。

(2) 「応募だけする人」を先に分けておく

キャンペーンのたびに応募だけを繰り返し、ふだんは買わない層がいます。たとえば「年12回応募しているが、キャンペーン期間外の購入はゼロ」という会員です。この層を混ぜたまま点数をつけると、全体の数字が歪み、「本当のファン」が見えなくなります。

(3) 目的は一つに絞り、目的に合った分析方法を選ぶ

「もっと買ってもらう」「別の商品も買ってもらう」「離れた人を呼び戻す」「他社から乗り換えてもらう」を一度に狙うと、たいていどれも中途半端になります。さらに、目的によって使うべき分析方法そのものが違います。優良顧客をもっと大切にしたいならRFM分析、上の会員3のような「離れかけた人の呼び戻し」が目的なら、在籍期間や離脱期間を軸に加えるCPM分析が向いています。

(4) 業界ごとの「節目」を考える

業界には、それぞれ購買の目安となる数字があります。たとえばタバコ業界では「連続3箱」がひとつの節目とされます。こうした節目をふまえて点数を設計すると、スコアが実態に近づきます。

よくある失敗例(抽象化しています)
・食品メーカーが嗜好飲料と自社のお菓子を組み合わせて販売しようとした例:組み合わせに無理があり、応募数が通常の3分の1以下に
・飲食チェーンが「はしご」来店を促した例:客単価の高い店から低い店へ誘導する形になり、動線も逆になって、反応率は0.1%以下に

(5) 「すぐ上のランク」が見える特典にする

会員ランク制は、「次のランクまであと少し」という目標がお客さまのやる気を高める、というのが業界で広く共有されている考え方です。ポイントは、特典がお金の価値に限らず「周りから見える」こと。航空会社の優先搭乗がよい例です。何を「見える特典」にできるかは、クライアントの事業の中に答えがあります。

08 OUTSOURCING外注・代行を検討する目安

データクレンジングは社内でも行えますが、次の項目に当てはまる数が多いほど、外部の専門家に任せたほうが確実で、結果的に費用も抑えやすくなります。

・件数が数万件を超える
・Web・はがき・店頭など、複数の申込経路やシステムのデータをまとめる必要がある
・住所や氏名の表記ゆれが多く、エクセルの関数だけでは直しきれない
・抽選・当選・ポイント付与など、結果について説明を求められる
・同じ作業が、キャンペーンや月次処理のたびに発生する

費用を見積もるときに伝えたいこと

データクレンジングの費用は、件数・項目・求める精度・納期によって大きく変わります。相談の段階で次の情報がそろっていると、見積もりが正確になり、話も早く進みます。

件数おおよその行数と、今後増える見込み
項目氏名・住所・電話番号・会社名など、整えたい項目
データの形Excel・CSV・システムからの出力など
目的重複応募の排除、DMの送付、顧客分析など
納期・頻度1回きりか、定期的に発生するか
取り扱い条件個人情報の受け渡し方法や、作業場所の条件

委託先を選ぶときに確認したい観点は、次の章のチェックリストにまとめました。

09 CHECKLIST委託先を選ぶ前に確認したい7つのポイント

各項目に、委託先への「聞き方」の例を添えました。実績値は、当社代表がこれまでに携わった案件のおおよその数値です(守秘義務のため案件名は伏せています)。

  1. 二重登録をどこまで見つけられるか名前の書き方の違い(A・B・C)まで含めて、重複応募を見つけているか。
    実績例:約50万件の申込から約1,500件の二重登録を見つけ、約150万円の予算流出を防止
    聞き方の例:「表記ゆれのある重複は、どうやって見つけていますか?」
  2. 抽選・選定の結果に偏りがないか確かめているか当選者やDMの送付対象が、特定の地域・年代・申込方法に偏っていないかを確認しているか。
    聞き方の例:「抽選や対象者の抽出のあと、結果の偏りをチェックしていますか?」
  3. 世帯の判定をどう運用しているか「同じ世帯」の判定基準と、迷うケース(D・Eのような例)の扱いが決まっているか。
    実績例:約1.2万件の同一世帯の候補を検出。プライバシーに配慮して自動ではまとめず、候補リストを作って1件ずつ確認する運用に
    聞き方の例:「同じ世帯かどうか迷ったとき、どうしていますか?」
  4. 件数が増えても精度を保てるか数百件のテストでうまくいっても、数十万件で同じ精度が出るとは限らない。テストデータの選び方が重要。
    聞き方の例:「本番の件数で精度をどう確かめますか?」
  5. 処理の途中経過を説明できるか各段階で何件を除外し、何件をまとめたかを記録していて、あとから説明できるか。
    聞き方の例:「最初の件数から当選者数まで、途中の件数を出せますか?」
  6. 不正を見つけた経験があるか組織的な不正応募や内部不正を見つけた経験と、その仕組みがあるか。
    実績例:店頭シール応募キャンペーンでの不正取得や、従業員による大口の不正を発見
  7. 間違いが見つかったときの対応が決まっているか誤りが見つかった場合に、誰が・どこまで・どの手順で直すかが事前に決まっているか。
    聞き方の例:「当選者に誤りがあったら、どう対応しますか?」

10 SUMMARYまとめ

キャンペーンの成果も、DMの費用も、顧客分析の正しさも、元になるデータの質で決まります。表記ゆれを直し、同じ人を見つけ、世帯を判定し、結果を確かめる──こうした地道なデータクレンジングの積み重ねが、データ活用の信頼を支えています。

名寄せには必ず「見落とし」と「まとめすぎ」のバランスがあり、スコアリングには目的に合った方法選びが欠かせません。委託先を選ぶときは、仕組みの見た目よりも、判断の基準と途中の経過を、わかる言葉で説明できるかどうかに目を向けることをおすすめします。

データ処理の品質について、ご相談ください

合同会社オンエーケー(OnAK)は、データクレンジング・名寄せ・データ突合を専門とする会社です。行政・金融・流通分野の大規模なデータ処理に携わってきた経験をもとに、今のデータの点検から、名寄せ・世帯判定のルール設計、顧客スコアリング、不正の検知まで、データ活用の土台を支えます。

「今のやり方で大丈夫か確認したい」「クライアントへの提案に専門家の目を入れたい」という段階のご相談も歓迎しています。