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解説 | データ整備とAI

仕事ができる人ほど、AI readyを急いだほうがいい

10日かかっていた仕事が1日で終わって、分かったこと

公開日:2026年10月23日 / 合同会社オンエーケー

自分の仕事に自信があって、まだAIをきちんと使っていない方へ。急いだほうがいいです。

住所データを整え、本当にある住所かを確かめる。私が長く仕事にしてきた作業です。先日、その確かめ方を見直す仕事をAIと組んでやってみました。以前のやり方なら10日は見込んだ仕事が、1日で終わりました。

正直に言うと、まだ少し興奮しています。そして、こう思いました。これで一番得をするのは、AIに詳しい人ではない。自分の仕事の「正しさ」を知っている人だ、と。

01 THE ANSWER CAME FIRST調べる前に、答えが返ってきた

住所を確かめるとき、私はデジタル庁が公開している住所の基本データ、アドレス・ベース・レジストリ(ABR)を照らし合わせる先に使っています。とても役に立つデータですが、作業を進めると、番地の先の「号」が載っていない区画があることが分かりました。

こういうとき、私はまず「別の公開データを足せば埋まるのではないか」「ネットで調べれば分かるのではないか」と考えます。長年の習慣です。

ところが、そう投げかけた瞬間に返ってきたのは、「その道では埋まりません」という答えでした。どちらも元をたどれば同じ系統の地図から来ているので、同じところが抜けている。理由も添えて、すぐに返ってきました。

調べる前に、無駄な道だと分かる。いちばん驚いたのは、ここでした。

左:部下がまる1日穴を掘って空の宝箱を掲げ、上司は夕暮れまで待っている。右:掘る前にロボットが地層をのぞいて「ストップ、ここも隣も同じ地層。宝はありません」と止め、男性は「じゃあ、次!」と次を指さす
図1 掘ってみるまで分からなかったことが、掘る前に分かる

02 IF I HAD ASKED SOMEONE部下に1日やらせていたら

以前の私なら、部下に「このデータで埋まるか、1日かけて確かめてみて」と頼んでいたと思います。1日待って、上がってきたものを見て判断する。結論は同じ「埋まらない」だったでしょう。

その1日、私の考えは止まっています。戻ってきたときには、何を考えていたのかを思い出すところから始めます。しかも、部下が1日かけて上げてきたものを、見た瞬間に脇へ置くのは気が引けるものです。気が引けるから、少しは使い道を探してしまい、寄り道が増えます。

AIが相手なら、思いついたら投げ、違えばすぐ捨てて次に進めます。考えが途切れません。途切れないので、「あの件は誰に頼んだか」「あの確認はどこまで進んだか」という枝葉の管理もいりません。10日が1日になった理由は、作業の速さよりも、待つ時間と思い出す時間と枝葉の管理が、まるごと消えたことにあります。

03 ONLY IF YOU CAN JUDGE速くなるのは、判断できる人だけ

ここが、この話の肝です。

AIの答えは速く、次々に来ます。けれども全部が正しいわけではありません。採るか捨てるかを決めるのは人です。間に部下も会議も挟まらないので、判断の良し悪しがそのまま仕上がりに出ます。

一つ例を挙げます。住所の確からしさに点数を付けたとき、機械の出した点数が、理屈の上では正しいのに、現場の感覚とは順番が逆になっていました。区の名前が抜けているだけで、誰が見ても場所が分かる住所よりも、町名がまるごと抜けて場所が決められない住所のほうが、高い点になっていたのです。

品評会の表彰台。1位は見た目が完璧な食品サンプルで中は空っぽ(町名がまるごとない住所)、2位はいちごが一粒落ちただけの本物のケーキ(区の名前だけ抜けた住所)。ロボットは「見た目は1位が完璧です!」、男性は「中身があるのはこっちでしょ!」
図2 見た目の近さで選ぶと、中身のないほうが勝ってしまう

文字の似ている度合いで計算すれば、そうなります。数字としては筋が通っています。けれども、これでは確認する人が納得できず、使われません。この逆転に一目で気づけたのは、長く住所データを見てきたからです。気づけなければ、AIはそのまま突き進みます。

AIは、判断できる人を何倍にも速くします。判断できない人を速くはしてくれません。

04 HOURS OR STANDARDS工数で頼むか、基準で頼むか

AIと組んで一番変わったのは、頼み方です。

工数で頼む(これまで)基準で頼む(これから)
頼み方「このデータで埋まるか、1日かけて調べて」「この区画の号が埋まれば使う。埋まらなければ『要確認』に回す」
待ち時間1日数分
返ってきたもの1日分の成果なので、捨てにくい基準に合わなければ、その場で捨てられる
頼む人に要るもの誰に何日頼むかの段取り何が分かれば次へ進めるかを、言葉にする力

工数で頼むとき、頼む人は「どれだけ時間をかけるか」を決めています。基準で頼むとき、頼む人は「何をもって合格とするか」を決めています。AIに対しては、後者でないと速くなりません。

左:袋だけ渡して「なにか、いいもの買ってきて」と頼むと、子どもが日暮れに関係ない物を山ほど抱えて帰ってくる。右:「卵を1パック。なければ、すぐ帰る」とメモを渡すと、10分後にロボットが卵を持って帰ってくる
図3 袋だけ渡すか、メモを渡すか

これは、人に頼むときも同じです。基準を言葉にできる人は、AIにも、部下にも、外の会社にも、速く正しく頼めます。

05 AI READY MEANSAI readyとは、判断を言葉にすること

「AI ready」は、AIを使える状態にデータを整えておくこと、という意味で使われることが多い言葉です。

私の実感は違います。今回の元のデータには、書き方の乱れも欄のずれもたくさんありました。それでも速かった。速かったのは、データがきれいだったからではなく、「何を正しいとするか」「迷ったらどうするか」を、その場で言葉にできたからです。

仕事のできる人の頭の中には、その基準がもうあります。ただ、言葉になっていないことが多い。「見れば分かる」「なんとなくおかしい」で済んできたからです。AI readyとは、その「見れば分かる」を、AIに渡せる言葉にしておくことだと、私は考えています。

06 WHY HURRYなぜ急いだほうがいいのか

AIは、これからもっと使いやすくなります。そう遠くないうちに、誰でもAIに頼めば、ひととおりのデータ整備ができる時代が来ると思います。

そうなったとき、差がつくのは「何を正しいとするか」を持っている人です。そして今は、その基準を持っている人がAIと組むと、持っていない人との差が一番大きく開く時期です。誰でもできるようになる前の、このはざまの時間は長くありません。

もう一つ、身軽さも効きます。細かな社内ルールで動く組織にいたら、AIの答えを使うたびにルールに書き起こし、承認を待つことになり、判断はそこで止まっていたと思います。まず自分の手元で試し、自分で判断してみる。それができる人から先に進みます。

07 START TOMORROW明日からできること

難しいことは要りません。

  1. 「見れば分かる」を三行にする自分がいつも「見れば分かる」と言っている判断を一つ選び、それを三行の言葉にしてみます。
  2. その三行をAIに渡してみる公開されているデータや、自分で作った試しのデータで、同じ判断ができるか確かめます。お客さまの個人情報は入れません。
  3. 「違う」と思ったら、理由を返すなぜ違うのかを言葉にして返します。その往復が、そのままAI readyの練習になります。

自分の仕事を知っている人ほど、この往復は速く回ります。だから、急いだほうがいいのです。

関連:ホワイトペーパー『データ作業、AIに任せられること・任せられないこと』(人とAIの役割分担)/同じお客さまを、同じ人として数える(データを「決める人」と「そろえる人」)/その住所、「一之江」と「一之江町」を取り違えていませんか

気になっていることを、一行で。

「うちの住所データで、何を正しいとすればよいか」「どこから人が見るべきか」など、一行だけでも構いません。データを送っていただく必要はありません。内容を伺い、確かめ方からお答えします。

合同会社オンエーケー(OnAK)は、データクレンジング・名寄せ・データ突合を専門とする会社です。